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大河ドラマ化を目指して   片山長生さん・「三愛のクニへ」研究会

2020年7月31日

 岩美町の片山長生さん(元高校教師)は、地元出身の外交官兄弟、澤田節蔵・廉三とその妻・美喜の物語をNHKの歴史大河ドラマに取り上げてもらうため、原作となる小説「愛郷」を出版しました。史実に基づく実名小説で、日本の現代史がよくわかると話題になっています。
 小説「愛郷」は戦後日本の国際社会への復帰に尽力した初代国連大使・澤田廉三の一代記です。廉三は昭和天皇の皇太子時代、ヨーロッパ歴訪に通訳として同行するなど、外務次官まで登り詰めました。兄の節蔵も外交官で、戦前日本の国際連盟脱退に抵抗したことで有名です。戦後は文化放送会長や東京外国語大学初代学長などを歴任しました。廉三の妻・美喜は三菱財閥の孫娘で、戦後は混血孤児のため「エリザベス・サンダース・ホーム」をつくり、2千人近い孤児を育てました。
 この3人の「人類愛」「祖国愛」「母子愛」を広く紹介するため、片山さんらは「三愛のクニへ」研究会をつくり、NHKに大河ドラマ化実現を働きかけています。ドラマ化の条件は「原作になる本があること」ですが、あれもこれも盛り込めば、物語の展開が複雑になるため、廉三を軸にしたドラマ化を目指すことにしました。
 書いたのは片山さんです。3人の評伝に加えて、廉三の手紙類などで裏付けを取り、会話をつくり、仕上げたといいます。とくに天皇との会話には腐心したそうです。
 さて、「愛郷」は明治時代半ばから昭和31年の日本の国連加盟のころまで、およそ70年間が舞台です。戦争が続く激動の時代でした。それぞれの章ごとに年表や写真を添えて、わかりやすい歴史小説づくりに努めています。A5判、395㌻の力作です。
 「ヒューマン・ドキュメンタリー・ドラマ」を目指した物語とあって、全編「愛」であふれています。「母子愛」「父子愛」「隣人愛」「郷土愛」「師弟愛」…。廉三の初恋の相手も登場します。NHK朝ドラの「花子とアン」の主人公・村岡花子です。その「恋愛」の切ない結末も紹介しています。節蔵や美喜のところでは「博愛・人類愛」。そして教育者・片山さんの人づくり論や人生語録が、要所要所を飾っています。
 この本の真骨頂は、日本の現代史に切り込み、戦争の正体を明らかにしようとしたところでしょう。「外交の延長線に戦争がある」とすれば、外交官兄弟の物語は好むと好まざるとにかかわらず、戦争の真相や結末を語らなくてはならないのかもしれません。日本はなぜ泥沼の日中戦争にのめり込んだのか。負けるとわかっていた太平洋戦争へ突き進んだのか。その末路が敗戦です。300万人を超す人がなくなりました。人類初の被爆国になり、満蒙開拓・シベリア抑留の悲劇なども生みました。
 満州事変では米英と手打ちする局面があったこと、軍部はアヘンなどの利権に染まり、無責任だったこと…などの外交裏面史が語られています。とかく真相話は教科書には載りません。歴史ファン必読の書です。

大河ドラマに向けて本ができました(片山長生さんと「愛郷」)

愛郷~外交官 澤田廉三の生涯~

大河ドラマ化が待たれる「三愛のクニへ」のポスター

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