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青谷の漆器に注目       橋谷田岩男さん

2020年7月12日

 鳥取市の県立博物館で7月12日、漆塗り体験講座があり、講師の橋谷田岩男さん(佐治漆研究会)が手ほどきしました。このなかで橋谷田さんは「青谷上寺地遺跡から出土した弥生時代の漆器は楽浪漆器に酷似しており、さらに調査が必要」と指摘し、注目を集めました。
 青谷上寺地遺跡から出土した漆器は、そろばん玉に似た容器とフタ、曲げ物の台座の一部、合わせて3点です。いずれも黒漆地に赤漆の渦巻き模様がスタンプ紋のように入っており、フタには5弁の花びら模様があります。2~3世紀の作品と推定されています。橋谷田さんによると、渦巻き模様の漆器は朝鮮半島・楽浪郡から出土したものによく似ているといいます。
 楽浪郡は中国・漢の時代に設けられたもので、紀元前108年~313年まであったといわれています。漢の支配地でした。いまの北朝鮮の首都・平壌あたり。その墳墓群から金銀器、青銅器、漆器、玉器などが見つかっています。
 青谷上寺地遺跡整備室の北浦弘人室長は「青谷では玉づくりのほかに高度な花弁高坏などをつくって、北九州や朝鮮半島南部の鉄などと交換、交易しており、その過程で楽浪漆器が入ってきたのかもしれない。ただ、青谷の漆器には花弁模様が入っており、地元産かもしれない」と、判断を留保しています。いずれにしても、弥生の博物館といわれる青谷上寺地遺跡は〝宝の山〟です。漆器を含めて、ここで出土した1353点が2019年に国の重要文化財に指定されています。
 橋谷田さんによると、日本の漆器の歴史は古く、いまから1万年ほど前の縄文時代にさかのぼるそうで、函館市垣ノ島遺跡や福井県鳥浜貝塚などから出土した赤糸やくしが最古のものといいます。鳥取市布勢でも赤漆土器などが見つかっています。
 県内の漆の産地は佐治谷でした。江戸時代から昭和40年ごろまで続き、漆器産業を育てました。県統計によると、昭和10年の漆器製造販売額は約14万円、いまのお金に換算すると2億8千万円ほど。漆工は125人、鳥取市に65人いたそうです。残念ながら、いま日本に流通する漆の98%は中国産です。
 橋谷田さんは2016年から佐治漆の復活を目指して活動を始めました。目標はウルシ木1万本の植栽。シカ害に悩まされながらも、苗木を植え続けています。賛同する仲間も当初の6人から20人に増えたそうです。
 さて、漆塗り体験講座です。12人の親子が参加しました。橋谷田さんから漆器の歴史や佐治漆の話を聞いた後、箸づくりに挑戦しました。漆かぶれに注意しながら、箸にウルシオールを塗り重ねていきました。漆の膜が長く使える丈夫な箸をつくるといいます。 

鳥取に伝わる漆作品を解説する橋谷田岩男さん

漆塗り体験教室

漆器の容器(青谷上寺地遺跡から出土)

漆器の蓋(青谷上寺地遺跡から出土)

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