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「大山さん」は永遠です        根平雄一郎さん

2019年12月14日

 根平さんの演題は「ナナカマドの実は赤かった」です。大山講座初年度(2017年2月)と同じタイトルですが、その後の大山の歴史研究の成果が加わり、内容はボリュームアップしました。
 根平さんの研究スタイルは現地主義です。歴史や伝承の現場に出向き、確かめ、考えることから始めます。大山研究のきっかけになったのが、「大山寺縁起絵巻」の牛の代かき絵図。百姓の求めに応じて、お地蔵さんが同時に牛引き、田楽、苗運びをこなしているもので、衆人を助ける地蔵信仰をよく物語っています。室町時代のもので、中学の歴史教科書に載っています。大学入試のセンター試験問題にもなりました。
 この牛の代かき絵図の舞台は、下野国(栃木県)の岩船山高勝寺です。根平さんが訪ねたところ、高勝寺が関東の地蔵信仰のメッカになっており、「伝承は無視できない」と悟ったといいます。この後の「大山寺縁起絵巻」には、コメが減らないナナカマドの物語が続いていますが、大山寺の鐘つき堂のそばにはナナカマドの碑が建てられています。まさに絵巻通り、「ナナカマドの実は赤かった」です。
 根平さんの高勝寺訪問は、琴浦町の生身地蔵の霊場・岩船地蔵の縁起解明につながります。大山寺の第4世座主・胤海(いんかい)が江戸時代、日光に出かけた際、高勝寺に立ち寄り、下野国を救済したのにちなむ話という見立てです。
 話は変わって、大山で地蔵信仰を始めたのは金蓮上人です。根平さんは、その末裔探しも行い、玉造温泉の老舗旅館を突き止めました。その一族のひとりがタレントの長谷川博己さんだそうです。新年から始まるNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公・明智光秀役です。根平さんは「大山さんのおかげかも」と我がことのように喜んでいます。
 大山の地蔵信仰は衆人を救うと同時に、牛馬の守り神です。阿弥陀堂のそばに墓がある基好上人が提唱しました。大山寺には近郷近在から牛馬詣が始まり、博労座で牛馬市が始まりました。明治時代には日本最大の牛馬市に発展しました。この物語が日本遺産に認定されました。鳥取県の和牛改良のルーツは、大山さんといえそうです。
 大山信仰は山陽方面で活発です。根平さんは尾道市、笠岡市、瀬戸内市などを回り、死者の霊魂が集まる大山をまつる姿を確認してきました。遠隔地だからこそ盛んといいます。恐れ多いということで、大山を〝大仙〟さんと呼んでいるそうです。庄原市では牛馬や家内安全を願って「大山供養田植」(国指定重要無形民俗文化財)がにぎやかに続いています。長く、深い歴史に感謝が絶えません。
 根平さんは「大山開山1300年祭は終わったが、大山研究を続け、その成果を後に続く人や若い人に伝え残していきます」と講座を締めくくりました。

根平雄一郎さん

琴浦町の岩船地蔵

基好上人の墓

牛馬市(昭和6年)鳥取県のホームページから

塩原の大山供養田植え

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