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2024年4月20日
大正13年生まれで2月に百歳になられた、読み聞かせボランティアの会「ねぇよんでの会」の中嶋須美子さんが4月20日、鳥取市のわらべ館で昔話3作と、昭和初期の少女期の思い出を語られました。笑顔を絶やさず、流れるように味わうように語られる姿に集まった皆さんは聞き入っていました。
第一部は昔話3作です。「灰坊」は長者の家で働く釜の火焚き、名前がなく灰だらけ炭だらけではたらく若者を皆は灰坊と呼ぶようになりました。この長者には一人のお嬢さんがおり、遷宮見物用の衣装を着た灰坊に一目惚れ、めでたく結婚し家もますます繁盛したというお話です。この他に「見るなの蔵」「餅はばけもの」の2作を話されました。
中嶋さんは昔話の魅力を次のように話されました。「農耕民族の日本人にとって昔話を語るのは豊作を願うためです。一家だんらんの中で語り継がれてきました。昔話は善悪がはっきりしていて、さりげなく人の道を教えます。奥が深く、不思議な魅力があります。やさしく豊かな心をもった子どもになる一端になればと思います」
第二部は懐かしいお話です。大正13年生まれの中嶋さんが少女期を送った昭和初期の思い出を克明にお話されました。鳥取市内の山本洋服店で生まれた中嶋さんは、夕食後父親の寝床に入って昔話を聞かされたそうです。佐治谷ばなしや金太郎さんを話してくれた父親が、髭剃り後の頬を中嶋さんの顔に押し付けていたことを思い出し、うれしそうに「懐かしいですなあ」と言われていました。
遷喬小学校に通っていた中嶋さんは「一クラスに着物は1人か2人でほとんどが洋服でした」「ランドセルは珍しくハイカラ、ビロードのカバンの下の方に花柄の刺繡のあるカバンを使っていました」「干しブドウが珍しく大好きだった。バナナも好きだった」「若桜街道に大道芸人が来るのが楽しみだった」などなど90年ほど前の思い出を淀みなく詳細に語られました。きっと聡明で好奇心旺盛な少女期を過ごされたのだと思います。
中嶋さんのお話が大好きという82歳の女性は「おきれいで上品な方です。矍鑠(かくしゃく)として百歳とは思えない。私もあと18年、あやからないけんなあ」と言われていました。
中嶋さんは今回、多くの方の前でお話されたことを喜んでおられ「いつまでできるが分からないが、楽しい語りを続けていきたい」とおっしゃっていました。