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2019年10月10日
境港再発見講座「境港楽」は10月10日、市老人福祉センターであり、鳥取県の文芸史家・竹内道夫さんが境港市出身の文学者、杉谷代水や由木康の功績を語り、彼らがつくった星の歌を水木しげるロードで流してはどうかと提案しました。
杉谷代水(だいすい、本名虎蔵、1874~1915年)は児童文学の先駆者。テレビアニメなどでおなじみの「母をたずねて三千里」を翻訳したほか、唱歌の代表作「星の界(よ)」を作詞しました。「星の界」の一番はこうです。
月なきみ空に きらめく光 ああその星影 希望のすがた 人智は果てなし 無窮(むきゅう)の遠(おち)に いざその星影 きわめも行かん
星空のように、人智は無限、ますます学ぼうといったところでしょうか。アメリカの賛美歌に詩を付けたもので、明治43年の発表作です。小学校の音楽教科書に載っています。
由木康(こう、1896~1985年)は牧師で賛美歌の翻訳、哲学者パスカルの研究に生涯を捧げた人です。その代表作がクリスマス・ソング「きよしこの夜」。「きよしこの夜 星はひかり…」。オーストリアでつくられた讃美歌を翻訳したものです。こちらも音楽や英語の教科書に使われ、広く歌われています。
竹内さんは「杉谷代水とタカラヅカ」の講演のなかで2人を紹介しました。
それによると、杉谷は文武両道に優れ、東京専門学校(現在・早稲田大学)に進んだものの、病気のため中退。恩師の坪内逍遥の紹介で出版社に入り、「国語読本」を編集。その大半がその後つくられた国定教科書に採用されるなど画期的なものだったといいます。また、言文一致唱歌を提唱した同郷の作曲家・田村虎蔵の勧めで、「星の界」など70近い唱歌も作詞しました。坪内に刺激されて脚本や狂言なども執筆し、その内容が阪急グループの総帥・小林一三の目に留まり、宝塚少女歌劇誕生につながったそうです。
多芸多才の杉谷でしたが、名を高めたのは翻訳だったといいます。「母をたずねて三千里」はじめ、「ギリシャ神話」「アラビアンナイト」などを刊行し、外国文学の紹介、普及に貢献しました。また、共著には文章や手紙の書き方を指南する「作文講和及文範」「書翰文講和及文範」という隠れたベストセラーがあります。
竹内さんは「杉谷は多岐にわたって活動したため、印象が薄いが、日本の近代文学の草創期をつくったひとり。出身地はもっと顕彰活動をしてほしい。きよしこの夜とともに杉谷の歌も水木ロードで流してはどうか。境港がもっと元気になる」と訴えていました。夜の水木ロードになじみの星の歌が流れれば、〝星取県〟の国際化戦略に弾みがつきそうです。