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2025年6月27日
鳥取県立美術館の隣接地は国史跡・大御堂廃寺跡です。7世紀中頃、飛鳥時代に建てられた山陰最古級の古代寺院で、金堂や三重塔、大規模な僧房、木樋などの上水道施設を備えた寺院だったことが分かっています。この地は企業誘致用事業地となり、金堂や塔の柱を支えた礎石2基は近くの上灘小学校に移設されました。
6月28日、この礎石を動かすイベントが開催されました。それも1400年前の古代の人たちと同じように引っ張って、お寺づくりの苦労や工夫を感じてみようという試みです。集まったのは上灘小学校生の5、6年生82人です。木そりを引く、木そりの下に敷く丸太を前方に動かしたのち木そりを引く子どもたちを応援する班に分かれて約40メートル動かしました。
動かす礎石は三重の塔の中心柱を支える「塔心礎」と呼ばれる推定4トンの石です。昭和26年の調査で出土し、同校に保管されていました。子どもたちは「よいしょー」の掛け声で木製そりに付けられたロープを力いっぱい引くと丸太の上を滑っていきます。礎石の大きさに緊張していた子どもたちは、丸太の作用で動き出すことに驚いていました。
因幡万葉歴史館からお借りした万葉人の装束を、上灘小学校校長や子どもたちが着て礎石移動に参加し、雰囲気を盛り上げていました。倉吉市上灘町に住む福井伸一郎さんは、上灘地区振興協議会会長、山上憶良の会会長として地域の発展に尽力され、このプロジェクトを進めてこられました。福井さんは「一生に一度の貴重な体験です。いい思い出になるでしょう」と感慨深げに子どもたちを見つめていました。万葉歌人・山上憶良が伯耆国守として倉吉にいた時と時代が重なり、憶良も大御堂(久米寺)を眺めていたかもしれません。1400年前の風景が目に浮かぶようです。
写真の説明:礎石移動の様子です。万葉人の装束に人たちの右端が福井さんです。