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2025年6月22日
山上憶良の会(代表福井伸一郎さん)主催の講演会が6月22日、鳥取県倉吉交流プラザで開催されました。講師は元因幡万葉歴史館主任学芸員中山和之さんです。
山上憶良は因幡国守、大伴家持は伯耆国守を務めた人で代表的な万葉歌人です。中山さんは主に万葉の時代(奈良時代)の暮らしぶりや制度などを軽妙な語り口でお話されました。
まず「ある日の国守家持の食膳」を紹介。献立は白米のご飯、カブの汁、焼きぶり、アワビと大根の煮物、肉は鹿肉と鴨肉、枝豆等、おいしそうで健康に良い長寿食です。貧しい感じはせず、食材もバラエティに富んでいてうらやましささえ感じました。なお、万葉集の最後の歌「新たしき年の始の初春の今日降る雪のいや重け吉事」は家持が因幡国主のときに詠んだ歌です。
次は「万葉のファッション」、聖徳太子が制定したいわれる冠位十二階には各位階によって服装の色まで決まっていたそうです。当時の服装は唐風で平安時代以降の和風とは対照的に華やかな色彩が使われ、韓国の民族衣装のようだったと言われています。
万葉人のコミュニケーションで重要なのは宴会と和歌です。奈良時代は天然痘の流行、地震、政変が多発した激動の時代で、コミュニケーションは重要でした。同じものを一緒に食べることを重要視し、仲間であることの証(あかし)として、事あるごとに宴会が催されていたようです。そしてそこでは歌を詠み、自らの心の中をオープンにすることが求められました。
憶良は渡来人と言われています。このため日本には知り合いもなく、姓も持たず貧しい幼少期を送ったそうです。そのような憶良も多彩な能力と人に恵まれたことで頭角を現し、決定づけたのが遣唐使の一員として唐に赴き、自分の目で見た「国際人」であったことだそうです。
このほかにも国守の仕事等、万葉の時代を理解するうえで欠かせない知識にあふれた講演でした。
なお、「山上憶良短歌賞」の受付が7月1日から始まります。14回目を数える短歌賞です。是非みなさんも応募してみてはいかがでしょうか。詳しくはチラシをご覧ください。
写真の説明:順に講師中山和之さん、講演会の様子2枚、山上憶良の会福井会長、山上憶良短歌賞チラシです。