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伯耆は鉄のクニ  森井偲訓さん・伯耆国たたら顕彰会・奥日野ガイド倶楽部

2020年10月03日

 細身で反りのある日本刀の歴史を作った古伯耆物、その系譜を紹介する展覧会が日南町美術館であり、これに合わせて10月3日と4日の2日間、日本刀のギャラリートークや伯耆国の鉄の講演、たたら跡の見学会などが集中して開かれ、奥日野は歴史や日本刀ファンでにぎわいました。
 伯耆は古くから鉄のクニです。鳥取県公文書館の岡村吉彦さん(前県史編さん室長)が「古代中世の伯耆国と鉄」について講演し、古代の文献記録を紹介しました。
 それによると、平安時代の行政文書「延喜式」に伯耆が納める税として鉄や鍬があり、鍬は山陰道のなかで伯耆国だけに課せられていたといいます。ほかの文書では、伯耆・備中・備後に鉄の割り当てがあり、伯耆国のノルマは他国の倍以上だったそうです。また、伯耆国にある各地の荘園からも年貢として鉄や鉄製品の割り当てがあり、久永(くえ)御厨や矢送(やおくり)荘には鉄1万廷(1廷は約2kg)のノルマが課せられていたそうです。岡村さんは「伯耆には鉄を大量生産できる技術があり、運搬する馬がいたのでは」と見ています。
 こうした産鉄技術を背景に、伯耆古鍛冶の始祖・安綱が誕生しました。反りのある太刀の創始者で、国宝の「童子切」などをつくりました。息子とされる真守はじめ、有綱、安家、安綱などの一門がつくる太刀は、古くて尊い「古伯耆物」と呼ばれ、各地で宝物になりました。それらを集めて昨年、奈良・春日大社で「最古の日本刀の世界 安綱・古伯耆展」が開かれ、にぎわったばかりです。
 日南町美術館には大神山神社所蔵の「太刀 銘 安綱」(米子市指定有形文化財)や「太刀 無銘 伝古伯耆物」(鳥取県指定保護文化財)など11振りが展示され、刀剣研師の森井偲訓さん(日本刀文化振興協会理事)が刀の見方や太刀と刀の違い、日本一の玉鋼とされる印賀鋼(日南町産)について解説しました。
 この展覧会に合わせて、伯耆国たたら顕彰会(田貝英雄会長)と奥日野ガイド倶楽部(佐々木彬夫代表)は、「古伯耆物のルーツを巡る たたら遺跡探訪ツアー」を行いました。22人が参加し、日野町根雨のたたらの楽校―日南町美術館―県史跡「都合山たたら跡」(日野町上菅)を訪ねました。楽校でたたら製鉄の歴史や仕組みを学び、その最終商品でもある美術品の刀を見学し、産鉄の現場跡に立つ、まさに鉄文化をフルに体験するコースです。都合山たたらへは炭焼き小屋などがある山道を歩き、都合山の山内跡では産鉄のバーチャル画像を楽しみました。ガイドした佐々木代表は「1日がかりでしたが、たたら製鉄の全体がよく分かるツアーだったと、みなさんに喜んでいただきました」と高評価に満足そうでした。 

古伯耆物の姿を説明する森井さん

安綱の銘がある太刀(大神山神社蔵)

古代中世の伯耆の鉄づくりの拠点と鋳物師が住んでいたところ(×印)

史跡になった都合山たたら跡を訪ねる

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