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2025年5月12日
鳥取県米子市蚊屋巌公民館で5月12日、いわお塾があり日野町在住の小谷博徳さんが「世の中逆さが面白い」と題して講演しました。学校は面白くないから行かない。やる気がないから行っても目立たず静かにしている。そんな高校生が荒神神楽と出会うことで大変身を遂げる物語です。
小谷さんは日野産業高校の教師として長年務め、定年までの10年間を生徒とともに老人施設や敬老会を慰問して「ゆったり過ごそう」と考えていました。どうせなら地元の芸能ということで荒神神楽を始めることにしましたが、衣装や楽器はなし、部室なし、練習場所なし、資金なしの状況です。
ここで「世の中逆さが面白い」、小谷さんの本領発揮です。常識通りに動くのではなく、困難な状況に挑戦するからこそ、大きな成果が生まれるという信念です。
少しづつ部活の環境を整えていき、少数ですが部員も集まりました。平成4年のことです。転機は突然やってきました。平成6年に鳥取県教育委員会から佐渡での公演(全国高校総合文化祭と思われます)の話が舞い込み、部員不足は他の部活から応援を頼み臨んだ公演で、割れんばかりの拍手をいただいたのです。見たことのない芸能は大きな話題になりました。
ここで生徒たちの目の色が変わりました。「来年も全国大会に出よう。日本一を目指そう」と言い出したのです。成績重視の高校生活で、点数の取れない子どもたちは学校を休みがち、登校しても目立たずおとなしかったのが、神楽によって高校生活の生きがいができたのです。全国大会での優勝、国立劇場公演、文化庁長官賞受賞など輝かしい成績を残すまでになりました。
保護者も変わりました。学校に行かせることが大変だった子どもが自ら登校し、楽しんでいます。死に物ぐるいの保護者の協力は部活の運営にとって心強いものでした。
様々な出会いと協力がありました。衣装・道具の提供から舞の指導をしてくれた日南町の師匠、作務衣をプレゼントしてくれた米子の小さな呉服屋さん、自費で中古の大型バスを買った保護者、東京のレストランで出会った江府町江尾出身のボーイ君など、郷土芸能部のチャレンジは大勢の心を動かしました。
常識的な活動では期待できないが、困難に立ち向かい切り開いていく行動は感動を与える。そして人は動く。「世の中逆さが面白い」の神髄です。