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万葉集の言葉を味わう    中永廣樹さん

2021年6月20日

 鳥取市因幡万葉歴史館で6月20日に令和3年度万葉集講座開催の第1回目が開催され「万葉集の言葉を味わう」をテーマに中永廣樹さんの講義がありました。
 中永さんは万葉集の歌を「ことだま」や「うら(心)・うらかなし(心悲し)」など言葉によって分類し紹介しました。この日紹介された歌を1つ紹介します。
 「春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影にうぐひす鳴くも」 大伴家持の歌です。この歌は「春霞がたなびいていて心地よい春の季節を迎えた。なのに夕暮れの光の中で鳴いているうぐいすの声をきいていると悲しくてしょうがない」といった意味です。なぜ心地よい春の季節に、うぐいすの声をきいて悲しくなるのか、その意味を理解するのは難しいものがありますが、中永さんはこの歌の中にあるうら悲しとは心悲しいという意味で感傷を表しているといいます。青春の悲しみのような言葉で表現することは難しい人の気持ちの機微ではないでしょうか。
 中永さんはこのように古典文学を読むときに、ただただ現代語を当てはめて訳し、現代に解明されている科学的なものを訳に用いすぎると理解できない場合がある。昔の人の気持ちになって理解しようとすれば解釈が変わることもありどちらだけということでなく、そのバランスが大事と話していました。
 また言葉の語源についても話しがあり、例えば先ほどの「うら」に“む”をつけて動詞化され「うらむ」という言葉になったや、「うら」に“病む”をつけて「うらやむ」となったなど、参考文献に基づいて言葉の成り立ちについて考察しました。中永さんは漢字の持つ力はすごいものがあり、言葉に厳密な意味の違いを持たせることができたのは漢字のおかげという一方で、現代人は漢字に重きを置いているが、漢字を持つ言葉もひらがなにすると心の動きなど本質的な言葉の意味が読み取れることがある。と指摘しました。
 中永さんの楽しい話術ですすめられた講座に、定員いっぱいに集まった参加者からは笑いがこぼれ、古典に親しむ楽しい時間となりました。

中永廣樹さん

会場の様子

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