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世のため、人のため    小谷博徳さん

2021年1月15日

 湯梨浜町の高齢者大学「文化大学」は1月15日、ハワイアロハホールで人権講演会を開きました。講師は日野町の里山元気塾長・小谷博徳さん。小谷さんは人生体験をもとに、「何事も世のため・人のため・家族のため・自分のため―の順で考え、行動すると、人生が開けてきます」と説きました。
 小谷さんは元高校教師です。教員時代に郷土芸能部をつくり、地元に伝わる荒神神楽を復活し、何度も全国一に輝きました。部員はひきこもりや不登校の子どもたちですが、土日返上で全国各地を公演しました。その感動の物語は、小谷さんが書いた「世の中逆さが面白い」という本に詳しく載っています。
 小谷さんは現在、日野町議会議長、日野ボランティアネットワーク代表、日本一小さな美術館「蔵」館長。米子市の消費者と奥日野の農業者をつなぐ里山元気塾は20年になります。昨年秋には地元の伝承と歴史を古老に聞き、「まほろばの郷」として出版しました。ますます元気です。
 人権講演会のタイトルは「世の中逆さが面白い」。およそ50人が聞きました。小谷さんは郷土芸能を復活させた子どもたち、断食して亡くなった父親、寝たきりになって死んだ母親、刑期を終えて出所した他人のみとり―などの実体験をもとに、「人が生きる権利」について問題提起しました。
 「敬老会や老人ホームなどで神楽を舞い、感動してもらえる子どもたちは、すごい能力の持ち主です。問題は学校や家庭で、それを伸ばすステージをつくってやれなかったこと。学業成績だけで単位認定云々ではなく、学校に行けるようになったことを評価してやりたいものです。そうしないと、子どもたちが教育を受ける権利、子どもたちの人権は守れません」
 「太平洋戦争に従軍した父親は2カ月断食して95歳で亡くなりました。戦友を見捨てたというのが断食の理由です。病院へ強制入院させれば、救える命でしたが、できませんでした。家族は衰弱する父親を見守るだけです。つらい日々でした。病院へ入れれば、家族は楽ですが、父親の人権はどうなるのかと悩み、できませんでした。みなさんはどう考えますか」。この父親の断食ドキュメント「命ある限り」は、文庫本「世の中逆さが面白い」に収録されています。
 小谷さんの生々しい実話が続きます。「女性にとってうんこ、しっこは聖域です。だれがそのお世話をするか。多くの男性は施設に入れたがります。私は母親を2年間、面倒を見、最期は腕の中で息を引き取りました」。「刑期を終えた赤の他人もみとりました。がんで余命3カ月。だれも身元引受人にならないのです。ちょっとした縁で引き受けましたが、建前社会に苦労しました。天国へ送ってあげましたが、その人には感謝されました」。他人のこと優先の人生です。

小谷博徳さん

日野町の上菅・福長の伝承や歴史をまとめた「まほろばの郷」

「世の中逆さが面白い」(文庫本)

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