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地方から変わろう   松本薫さん

2020年9月26日

 米子市立図書館は9月26日、郷土作家・松本薫さんの講演会「小説とふるさと~日野3部作を終えて~」を開きました。開館30周年の記念事業のひとつで、40人が聴講しました。松本さんは「これからは地方が考え、地方から変わっていく時代」と訴えました。
 松本さんは米子市淀江町生まれ。27歳でUターンし、高校教師を務めるかたわら、「梨の花は春の雪」を皮切りに、ふるさとの小説を書いてきました。およそ10年かけて日野郡3町(日南・日野・江府町)の〝ご当地小説〟も仕上げ、「日野3部作」と話題になりました。
 3部作は日野町「TATARA」(2010年、伯耆国たたら顕彰会発行)、江府町「天の蛍―十七夜物語」(2015年、江府町観光協会発行)、日南町「日南X」(2019年、日南町観光協会発行)です。
 「TATARA」は奥日野のたたら製鉄と鉄山師・近藤家の物語です。中国地方は良質の砂鉄と豊富な山林資源でたたら製鉄が盛んでした。江戸時代の生産量は全国の8割を占め、奥日野は奥出雲とともにその中心でした。小説は奥日野の鉄が日露戦争を支えた話など、スケール大きく展開します。
 「天の蛍」は戦国時代の話です。尼子と毛利の〝国盗り物語〟のなかで、負けるとわかっていた江尾城主・蜂塚右衛門尉は尼子に加勢して討ち死にし、落城します。その領主をしのんで盆踊りが生まれ、「江尾十七夜」が今日まで450年も続いています。小説はそのいわれを恋物語と併せて説きます。
 「日南X」は推理作家・松本清張の父親が日南町出身で、清張もこの町をこよなく愛していたことにちなんで、ミステリー仕上げです。地元に伝わる神話をトリックに使い、生山大火やシベリア抑留で伏せられた国会議員の過去の闇を暴いていきます。
 3部作とも主人公は、町外からやってきた若い女性です。松本さんはふるさとにUターンした原体験を生かし、だれにも気兼ねすることのない〝よそ者〟の目線で日野郡の歴史や文化や人々を追い、小説にしたといいます。そして取材、執筆するうちに、「日野郡は愛着のある大切な場所になっていった」そうです。
 松本さんは「TATARA」を通じて、「文化は山から下ってきた」と確信したといいます。明治時代半ばの日野郡は3万5千人が暮らし、そのうち2万人がたたら製鉄で生計を立てていたといいます。いまは1万人。豊かだった奥日野も、富国強兵や戦争を続ける中央集権国家体制のなかで衰退していきました。「これからは地方で考えて、我々はこうありたいと変わっていく時代。みんなで自慢できるふるさとを作りましょう」と締めくくりました。

松本薫さん

松本薫さんのサイン会

会場はソーシャルディスタンスで満席

日野3部作

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