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た・ま・え・ま・る         根平雄一郎さん

2020年6月06日

 太平洋戦争から75年、山陰最大の戦災・境港の玉栄丸爆発事件が本になりました。書いたのは境港歴史研究会代表の根平雄一郎さん。新型コロナウイルス旋風が吹き荒れるなか、出版の資金集めに苦労しましたが、「戦争の恐ろしさを後世に伝え、平和の大切さを広めたい」という思いが通じました。
 玉栄丸は陸軍の徴用船です。太平洋戦争末期の1945年(昭和20年)4月23日、境町の大正町岸壁で荷揚げ作業中、積んでいた火薬が4度にわたって爆発し、その爆風と火災で120人が死亡、309人が重軽傷を負い、倒壊焼失家屋は431戸、町の3分の1が消滅しました。現場はJR境港駅や水木しげるロード一帯です。
 根平さんは40年ほど前、中学教員時代に「鳥取県の戦災を記録する会」に参加し、この爆発事件を調べ、被災者などの証言を集めて回りました。その成果は「玉栄丸追悼50周年誌」(境港市、1995年)などに生かされましたが、その後もいくつかの謎を追い続けました。
 そして、①爆発原因は兵隊のたばこの火だった②徴用朝鮮人船員もいたので、死者数は120人を上回る③爆発前の玉栄丸の船体写真発見―など新たな事実が分かったことで、75年目の真実として出版することにしました。
 その出版資金(80万円)は告知PRを兼ねてクラウドファンディングで募ることにし、5月26日までのおよそ1カ月間、インターネットなどで支援を呼びかけてきました。目標金額を超えれば、予定通り出版できるものの、集まらなければ、プロジェクトは不成立で出版を断念する仕組みです。
 各地で講演実績がある〝売れっ子講師〟の根平さんにとって、資金集めは自信があったものの、コロナ禍で講演会はすべてキャンセルになってしまい、頼みの水木ロード商店街も休業状態とあって、期限切れ間近になっても目標金額の半分も集まらず、根平さんは「自費出版を覚悟した」そうです。
 〝潮目〟が変わったのが、爆発事件の消火活動中に亡くなった遺族の出現です。この出会いをきっかけに、出版支援の申し出が県内外から相次ぎ、結果は119人から104万円ほどが寄せられ、「た・ま・え・ま・る~山陰最大の戦災 75年目の真実~」(A5判60㌻、税込み価格1,100円)は6月1日、発行されました。初版500冊。
 根平さんによると、水木しげるさんは生前、よくこんなことを言っていたそうです。「世の中には見えない世界というのがある。何でも一人でやってるんじゃない。たいがい後ろからそっと背中を押してくれているもんだ。そんな見知らぬ人たちに感謝しなければ、な」と。
 根平さんはこれからも「幻の夜見ヶ浜人」や「芋代官」など、境港ゆかりの不思議発見や偉人発掘などで、がんばると闘志満々です。

「た・ま・え・ま・る」を出版した根平雄一郎さん

玉栄丸の慰霊碑

爆発でできた大穴と破壊された境港駅周辺(本には事件を切り取る貴重な写真も収められている)

爆発前の玉栄丸

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