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千年の時を超えて通じる心          中永廣樹さん

2019年6月16日

 鳥取市の因幡万葉歴史館の万葉集講座が6月16日から始まりました。講座は昨年の大伴家持・生誕1300年を記念して始まったもので、元鳥取県教育長の中永廣樹さんの講演「大伴旅人の名歌鑑賞」で開講しました。令和の由来となった万葉集への関心が高まるなか、約50人の参加者で会場は満席になりました。
 大伴旅人は万葉集を編集したとされる因幡国司・大伴家持の父親です。旅人が太宰府の長官時代に催した「梅花の宴」で詠まれた歌が、元号・令和に使われましたが、その宴には後に伯耆国司になった山上憶良なども参加していたと伝えられています。因幡万葉歴史館には「梅花の宴」にまつわるエピソードなどが紹介され、改元以来、万葉集ファンでにぎわっています。
 中永さんは源氏物語の研究者ですが、万葉集にも精通しており、万葉集に収録された大伴旅人の作品約60首のなかから、とくに名歌とされる12首について解説しました。旅人は藤原氏との政争に巻き込まれながらも、重要な任務を全うしていきますが、そんななかで詠まれた歌には、人間味があるものが多いと中永さんは言います。
「験(しるし)なきものを思はずは一坏(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらし」
 くよくよ悩むよりは、酒を飲んで忘れてしまおうと詠んだもので、現代にも相通じるものがあると紹介しました。
「橘の花散る里のほととぎす片恋しつつ鳴く日しそ多き」
「人もなき空しき家は草枕旅にまさりて苦しかりけり」
 これらの歌は、旅人が大宰府に左遷された折、連れていった妻が亡くなってしまい、その時の心情を詠んだものです。「亡くなった伴侶を思う気持ちは昔も今も同じ。女々しさも感じますが、現代の男性にも通じるところです」と解説し、参加者もうなずいていました。
 万葉集には旅人や家持、憶良などの有名歌人のほか、農民など庶民の作品も含めて約4500首が収められています。中永さんは「万葉集は勅撰和歌集ではないものの、長く読み継がれ、研究されてきました。1300年後の今日でも共感できるものがあるからです。それが万葉集の価値です」と結びました。
 次回は11月、中永さんが憶良について話します。講座は来年2月まで続きます。

中永廣樹さん

熱心に聞き入る受講者のみなさん

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