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山陰初の私立中学創設者      松本薫さん

2019年3月16日

 北栄町中央公民館で3月16日、郷土史入門講座があり、作家の松本薫さんが「私立中学創設にかけた豊田太蔵の生涯」について講演しました。約30人が聴講しました。
 松本さんは米子市の小説家です。「TATARA」や「天の蛍~十七夜物語~」など鳥取県ゆかりの人物や歴史をテーマにした小説を書いています。2017年に鳥取中央育英高等学校の創立110周年を記念して、創設者の豊田太蔵にスポットをあてた小説「ばんとう」を発表しました。「ばんとう」とは太蔵の雅号「晩登」(晩になって暮れても登る、「大器晩成」の意)のことです。
 松本さんによると、太蔵が私立学校設立に向けた情熱の原点は、1872年(明治5年)に施行された「学制」にあるといいます。その学制の理念は「すべての人が教育を受けるべきである」というもので、太蔵があらゆる場面で語った教育理念と重なっているそうです。
 その私立中学設立には約30年かかっており、長い苦難の道でした。設立に向けて資金集めのための会ができたものの、やがて会員の大半が離れていきます。当時の文部大臣に直談判しましたが、受け入れられません。私立小学校として認可を受けていた育英黌(1906年創立)の入学者も激減し、ついに休校を余儀なくされ、地元住民からは「教育狂」と陰口をたたかれるなど苦難は続きました。
 それでも太蔵は情熱を失うことなく、今度は鳥取市出身の奥田義人文部大臣に直談判しましたが、そこでも認可が降りず、次の一木喜徳郎文部大臣の時にやっと認可され、1914年(大正3年)に「鳥取県私立由良育英中学校」として開校します。山陰初の私立中学でした。
 その育英中学校の講堂には、太蔵揮ごうの扁額「克己」が掲げられました。若者は大きな目標を持て、実行にあたっては強い意思を持ってすすめよとあり、生徒に熱い思いを投げかけています。
 松本さんは「太蔵の思いは現代にも通じるものがある。こうした偉人が鳥取にいたことを誇りにし、後世に伝えていきましょう」と締めくくりました。

松本薫さん

豊田太蔵

私立育英中学校講堂に掲げられていた扁額「克己」(太蔵揮毫)

郷土史入門講座

小説「ばんとう」

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