2016年3月05日

　倉益　敬氏（鳥取県歌人会会長）。シニアバンク・キックオフイベントで寄せられた短歌を紹介します。
「生きてるよ年に一度のやり取りの賀状を送る無事書き添て：湯浅俊久」「壇ふみが品よき老いを演じをり音なき庭に雪積もらせて：安田のりみ」「宮古島の黒糖ゆっくり溶かしをりサトウキビの香の立ちのぼりきて：佐々木千代子」「老斑をながいき星と教わりし昔偲びて手の眺む：戸野武子」「窓ごしの夜の空気をさわがせて予報どほりに雪女ゆく：石湯和子」「目を閉じてウクレレに聴くアロハオエ遥かな島よ外は粉雪：生田延子」「年波か寒波のせゐかめくりがたきお札とり出し焼いもを買ふ：佐伯立子」「気をつけて声かけながら児と帰る日暮れのせまる雪降る道を：森安有子」「雪代の洗いし野菜送り終えメールをうてば子の顔うかぶ：山本和子」「走り出す幼の上の凍て空に手づくり凧がふんわりと舞う：米山ちはる」「ただ独り父の過ごせる病室の窓辺をつつむ立春の光（かげ）：生田洋子」「背伸びするつもりはないけどあしらいのレモンのうすぎり位はできる：長岡洋子」「セロファンに色をつつみて長閑なりやおら手に取る真紅の薔薇を：松本加代子」「急がねば渡りきれない凍結のゼブラゾーンのてんめつの青：坂本佳子」「黄水仙の球根すべて眠らせて雪の布団をゆっくりと待つ：勝部良子」「灯さねば昼なお暗しスイッチを心変わりの空が操る：前田岸子」「渡米まえ孫は墓参に帰りたり拝む背に吹く松籟優し：吉岡文代」「エンドウは葉先を立ててあわ雪に近づく春の気配うかがう：橋本慎一」「卒業したのはいいけれどこれからの私は何を目指せばいの：近藤美穂」「灯を消してふたりで祝う誕生日私の顔が桃に似てくる：ＳＫ」「桃の花かざれば雛はよろこんで聞こえてきそう春の足音：中村雅宣」